公開 2026-09-07最終更新 2026-09-20
停電対策:冷蔵庫は何時間もつか、トイレは流せるか。時間順に整理
停電で質問が多い冷蔵庫とトイレを、条件ごとに分けて説明します。冷蔵庫は約4時間、冷凍庫は約1〜2日(農林水産省)。トイレが流せるかは便器と建物の給水方式で違います。照明・情報・電源も時間軸で整理しました。
停電対策は「時間が経つほど困りごとが変わる」ことから考える
停電の対策を考えるときは、「何が使えなくなるか」を時間軸で並べると抜けがなくなります。 最初の1時間に要るものと、3日目に要るものは違います。
とくに質問が多いのが冷蔵庫とトイレです。この2つは後ろに独立した見出しを立てました。
停電は、時間が経つほど困りごとが変わります
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出典:防災備蓄診断 編集部作成
最初の1時間:まず安全と情報
- 照明:夜間なら足元が見えないことが最初に困ることです。懐中電灯・ヘッドライトを寝室と玄関に1つずつ。スマホのライトは電池を消耗するので、最初の数分だけにします。
- 情報:停電の範囲と復旧見込みを知る手段が必要です。総務省の資料では、全国の携帯電話の基地局のうち、バッテリーが24時間以上もつのは1割で、9割は24時間未満です。停電が長引くと、通信は不安定になっていきます。手回し・電池式のラジオが確実です。
- 火の元:地震による停電なら、通電再開時の火災(通電火災)を防ぐため、ブレーカーを落として避難します。
1晩:暗さと暑さ・寒さ
- 部屋全体の明かり:懐中電灯は「点」しか照らせません。家族が同じ部屋で過ごすには、置き型のLEDランタンが1つあると精神的な安心感が大きく違います。
- 空調:夏は熱中症、冬は低体温症のリスクが一晩で現実になります。夏は充電式扇風機と水分、冬は毛布・アルミ保温シート・使い捨てカイロを。
- 冷蔵庫:扉を開けなければ、冷蔵庫で約4時間、冷凍庫で約1〜2日、低い温度を保てるとされています(農林水産省)。開閉を最小限に。もつ時間と、ポータブル電源で動かせるかは、このあとの「冷蔵庫は何時間もつか」で詳しく書きます。
3日間:電源と水・トイレ
- スマホの電源:安否確認と情報収集の頼みの綱です。モバイルバッテリーに書かれている「スマホに何回充電できるか」の目安を見て、家族の台数と日数を掛けて足りるかを確認します。3日を超えるならポータブル電源の領域です。
- 水:マンションでは、停電で断水したり、共用の設備が使えなくなったりすることがあります(東京都)。停電時に水が出るかどうかは、建物の給水方式を管理会社に確認しておきましょう。
- トイレ:断水すれば水洗トイレは使えません。携帯トイレが1人1日5回分必要です。停電だけでも流せなくなる場合があります(後述)。
- 調理:IH・電子レンジは使えません。カセットコンロがあれば温かい食事が作れます。
冷蔵庫は何時間もつか
停電でいちばん質問が多いのが冷蔵庫です。答えは「開けなければ、思ったよりもつ」です。
- 冷蔵庫:約4時間
- 冷凍庫:約1〜2日
扉を開けない場合の目安で、気温や中の食品の量によって変わります(農林水産省)。停電が長く続いたら、傷みやすい肉・魚・惣菜は、この目安の時間を過ぎたら捨てます。完全に溶けた冷凍食品を、もう一度凍らせるのは避けます。
**扉を開けるたびに、この時間は短くなります。**何がどこにあるかを先に思い出してから、 一度で取り出すのが基本です。停電が長引きそうなときも、扉の開け閉めを最小限にすることが基本です(農林水産省)。
ポータブル電源で冷蔵庫を動かせるか
動かせますが、**容量の考え方が変わります。**冷蔵庫は常に全力で動いているわけではなく、 庫内が冷えれば止まります。1日あたりの消費電力量は、カタログや本体の表示にある年間消費電力量を365で割れば出ます。 たとえば年間300kWhの冷蔵庫なら、1日およそ0.8kWh(800Wh)です。
この場合、1,000Whクラスのポータブル電源では、冷蔵庫を1日動かすだけでほとんど使い切ります。 ご自宅の冷蔵庫の値で計算してみてください。照明と通信に絞った場合に何日もつかは 1000Whのポータブル電源でできることで計算しています。
停電したとき、トイレは流せるのか
停電したときにトイレが流せるかは、便器の種類と建物の給水方式によって違います。
- 便器の種類:電気で洗浄する便器には、停電時の操作方法が用意されている機種もあります。**取扱説明書を今のうちに確認してください。**停電してから探すことになりがちな情報です
- 建物の給水方式:東京都は、マンションでは停電で断水や共用設備が使えなくなることがあるとしています。自分の建物がどの給水方式かは、管理会社に確認できます
**水が出ないと分かった時点で、携帯トイレに切り替えます。**必要数は1人1日5回分です(東京都)。 断水したときの水の使い分けは断水への備え、 携帯トイレの選び方は携帯トイレ(簡易トイレ)の選び方にまとめています。
なお、風呂の残り湯でバケツ流しをする方法は、建物によっては勧められません。 排水管が傷んでいることに気づかずに流すと、下の階に逆流するおそれがあります。東京都は、マンションでは「トイレはまず流さない」ことを全戸で徹底するよう呼びかけています。
医療機器・在宅ワークがある家庭
在宅酸素、CPAP(無呼吸症候群の治療器)、電動ベッド、冷蔵保存が必要な薬(インスリンなど)がある家庭では、停電が健康に大きく影響します。
ここで気をつけてほしいことがあります。ポータブル電源を買えば解決する、とは限りません。 酸素濃縮器の消費電力は機種や流量で違います。国立成育医療研究センターの資料にある機種の例では、流量5L/分で175Wです。これを24時間動かすと4,200Whになり、1,000Whの電源では計算上でも5時間あまりです。
先にやるのは、物を買うことではなく確認です。
- 機器の供給業者に、停電時の酸素ボンベと切り替え手順、24時間つながる連絡先を確認する。
- 契約している電力会社に、停電時の情報提供や相談の窓口を確認しておく。
- 市区町村の避難行動要支援者名簿に登録し、個別避難計画の対象になっているか確認する。
- 主治医と、連絡する目安と受け入れ先を決めておく。
順番と、それぞれで何を聞けばいいかは在宅で医療機器を使う家庭の停電対策にまとめました。電源を足すかどうかは、そのあとの判断です。
在宅ワークで「仕事が止まると困る」場合は事情が違います。ノートPCとルーターの消費電力(本体やACアダプターの表示)に使う時間を掛けて、必要な容量を出します。
備えの優先順位
- 懐中電灯・ヘッドライト(人数分)
- 手回し/電池式ラジオ
- モバイルバッテリー(大人1人1個)
- LEDランタン
- 携帯トイレ・飲料水(断水対策)
- カセットコンロ
- ポータブル電源(停電への不安が高い、医療機器がある場合)
ポータブル電源は高額なので、まず1〜6を揃えてから検討してください。容量の選び方はポータブル電源の選び方にまとめています。1,000Whクラスで何が何時間動くかは1000Whのポータブル電源でできること、照明と通信に絞る前提なら500Whで足りる家庭・足りない家庭を見てください。停電が数日以上続く想定があるなら、ソーラーパネルで本当に充電できるのかもあわせてどうぞ。
停電を想定した診断は停電に備える防災診断から始められます。
参考資料
- 農林水産省「停電や断水、大雨による浸水に遭われた地域の皆様へ~食中毒に注意しましょう~」
- 総務省「災害時における携帯電話基地局等の強靱化対策事業」(令和7年6月)
- 東京都「マンション防災はみんなで『備える』、避難は『とどまる』」(2025年9月)
- 東京都「もしもの時に困らないトイレの備蓄」(2025年9月)
- 内閣府「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」
- 国立成育医療研究センター「災害対策マニュアル 医療機器が必要な子どものための~電源確保を中心に~」(第3版)
- 内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」