防災備蓄診断

公開 2026-09-12

止水板・水のうの選び方:玄関からの浸水を遅らせる家庭用の備え

止水板は水を止めるより「入り込みを遅らせる」道具です。水の入り口、備える高さ、据え置き板・吸水土のう・水のう袋の3タイプ、一人で置ける時間、店舗・事務所の考え方、補助金の使い方まで、判断の軸をまとめました。

止水板は「水を止める」より「入り込みを遅らせる」道具です

短時間に強い雨が降ると、道路にあふれた水が玄関や勝手口、ガレージの入口から家の中へ入ってきます。床上まで来なくても、床下に水が回ると、乾かして片付けるまでに時間がかかり、家具や家電の買い替えにつながることもあります。そうした「じわじわ入る水」を減らし、避難や片付けの時間を稼ぐのが止水板と水のうの役割です。

先に大事なことを書いておくと、家庭用の止水板や水のうは、川の氾濫のような大きな水を止めるものではありません。東京都下水道局は、止水板や土のうで水深の浅い浸水を軽減できるとしています。入り込みを減らし、遅らせるための備えです。この前提を押さえたうえで、判断の軸を順に見ていきましょう。

判断の軸

1. 水はどこから入るか

浸水の深さで、できることが変わります

横にスクロールできます →

浸水の深さごとに起きること30cmで車の走行が難しくなり、50cmで1階の床の高さに達して大人も歩行が困難になり、車が浮くこともある。50cmを超えたら2階などへ。玄関止水板は浅い浸水向け30cm車の走行が難しくなる50cm1階の床の高さ。大人も歩行が困難50cm超外へ出ず、2階など高いところへ(垂直避難)深さは目安です。流れの速さや、家の周りの地形によって同じ深さでも危険度が変わります。
止水板は、浅い浸水に備えるものです。守れる高さは製品ごとに違うので、製品の仕様と、ハザードマップの自宅の想定浸水深を見比べてください。50cmを超える想定なら、止水板より先に避難の判断が要ります。

出典:国土交通省「水害ハザードマップ作成の手引き」(令和8年5月版)をもとに編集部作成

止水板を置く場所は、家によって違います。まず、自宅で水が入りやすい場所を歩いて確認してみてください。

  • 玄関ドアの下、勝手口、掃き出し窓のレール
  • ガレージや駐車場の出入口(道路より低いことが多い)
  • 半地下の部屋や、地下への階段
  • 浴室・洗濯機・トイレの排水口(下水の逆流)

出入口には止水板や水のう、排水口には水のうをのせるといった使い分けになります。「ここから入る」が分かると、必要な幅と枚数が決まります。

2. どのくらいの高さまで備えるか

国土交通省の重ねるハザードマップで、自宅の想定浸水深を確認しておきましょう。家庭用の止水板が守れる高さは製品ごとに違うので、製品の表示と自宅の想定浸水深を見比べてください。深い浸水が想定される地域では、板で止めるより「上の階へ避難する」「車を高台に移す」を優先するほうが現実的で、止水板は初期の入り込みを減らす補助と考えます。

3. タイプで選ぶ:据え置きの板、吸水土のう、水のう袋

家庭向けの浸水対策用品は、大きく3つのタイプに分かれます。

  • 据え置きの止水板(樹脂製・金属製):出入口に立てて、連結して幅を広げる。繰り返し使えて、設置が早い。ただし床が平らでないと隙間ができるので、下に水のうやシートを組み合わせて使う製品が多い。
  • 吸水土のう:水を吸うと膨らんで土のうになる袋。使う前は薄くて軽いので保管しやすく、土や砂がいらない。使い切りかどうかは製品の表示で確かめる。
  • 水のう袋:袋に水を入れて重しにする。排水口の上にのせて逆流を抑える使い方や、段ボール箱に入れて出入口に並べる使い方ができる。繰り返し使えるかは製品の表示で確かめる。

東京都下水道局や葛飾区は、家庭用のごみ袋を二重にして水を半分ほど入れる「簡易水のう」を紹介しています。まずはこれを知っておくだけでも、当日の対応が変わります。買う場合は、上の3タイプのうち、自宅の水の入り口に合うものから選びます。

4. 一人で、何分で置けるか

台風は前日から分かりますが、局地的な大雨は数十分で状況が変わります。「家にいる人が一人で、暗くても、10分以内に置けるか」を基準にすると、重すぎる製品や組み立てが複雑な製品は候補から外れます。据え置きの板なら1枚の重さと連結の手順、吸水土のうなら膨らむまでの時間と水の量、水のう袋なら注水口の大きさ(バケツや蛇口から入れやすいか)を仕様で確認しましょう。

5. 保管場所と、使ったあと

止水板は玄関の近くに置いておかないと、いざというとき取りに行けません。折りたためるか、立てかけて保管できるか、使用後に洗って乾かせるかも見ておきたい点です。吸水土のうは使い切りのため、使用後の処分方法(自治体のごみ区分)をあらかじめ確認しておくと安心です。

6. 住まいの形で優先度が変わる

  • 戸建てや1階の住戸:玄関・勝手口・掃き出し窓の3か所を想定して、幅と枚数を数える
  • マンションの2階以上:住戸への浸水は起きにくい一方、排水口の逆流と駐車場・エントランスの浸水が課題。水のう袋で排水口を押さえる備えが中心になる
  • ガレージや半地下がある家:想定浸水深が浅くても水が集まりやすいので、据え置きの板と水のうの組み合わせが向く

店舗・事務所の場合

店舗や事務所は、出入口が広く、シャッターやガラス扉の下から水が入ります。入口の幅に合わせて連結できる据え置き型と、排水口用の水のうを組み合わせるのが基本です。営業中に水が来たときに誰が設置するかを決め、置き場所を従業員全員が知っている状態にしておくと、備えが機能します。地下駐車場や電気室がある建物では、板の高さより先に「水が来たら電源をどうするか」を決めておくことも大切です。自治体によっては、事業所を対象に含む止水板の補助制度があります。

補助金を使えることがあります

止水板の購入や設置工事に補助を出す自治体があります。当サイトで確認できた範囲では、2026年9月時点で33都道府県・114の制度があり、費用の2分の1を補助する制度が多くなっています。東京23区には、補助率が5分の4〜10分の9、上限100万円以上という手厚い区もあります(当サイトに載せた都内18件のうち、5分の4以上は5件、上限100万円以上は9件)。工事を伴わない「簡易止水板の購入だけ」を対象にする自治体もあります。

注意したいのは、「購入・着工の前に申請」を条件にしている制度があることです。公式ページにその条件をはっきり書いている制度があり、書かれていない制度でも、申請の窓口で同じことを言われる場合があります。先に買ってしまうと対象外になるので、お住まいの自治体の手順を先に確認してください。都道府県別の一覧は止水板・浸水対策の補助金一覧にまとめています。

基準を満たす選択肢の例

順位ではなく、上の軸で分けたタイプの例です。どれが合うかは、水の入り口と住まいの形で決まります。

タイプ向いている状況見ておく点
据え置きの止水板(樹脂製)玄関・ガレージなど決まった出入口を、繰り返し守りたい1枚の幅と高さ、連結できる枚数、重さ、床との隙間をどう埋めるか
吸水土のう保管場所が小さい。土や砂を用意できない都市部膨らむまでの時間、吸水後の重さ、使い切りかどうか
水のう袋排水口の逆流を抑えたい注水口の大きさ、1個の幅と高さ、何個で出入口の幅を埋められるか

このサイトでは実際に使用していない製品の使用感は書いていません。最後はメーカーの仕様表で、自宅の出入口の幅と想定浸水深に合うかを確認して選んでください。

買ったあとにやっておくこと

  1. 一度、実際に置いてみる。玄関の段差や床の傾きで隙間ができる場所が分かります。隙間ができるなら、水のうやシートを足します。
  2. 置き場所を決めて家族で共有する。玄関収納など、暗くても取り出せる場所に。吸水土のうは水道の近くだと当日の作業が楽です。
  3. 年に一度、台風シーズン前に点検する。樹脂の割れ、結束バンドの劣化、水のう袋の穴を確認します。

浸水を想定した備え全体は、防災備蓄診断で家族の人数と住まいから数量まで出せます。在宅避難を考えている方は在宅避難の準備もあわせてどうぞ。

吸水土のうと水のう袋は、据え置きの板の隙間を埋める役にも立ちます。まず出入口の幅を測ってから、枚数を決めてください。

参考資料

無料診断

うちに必要な量を計算する

家族の人数と日数から、この品目を含む備えの必要量と足りない分を診断します。

診断をはじめる