公開 2026-11-01
携帯浄水器と給水タンクの選び方:断水が長引いたときの生活用水の確保
断水が3日を超えると、飲み水より先に「洗う・流す」水が足りなくなります。携帯浄水器の表示で確かめたい除去の対象と総ろ過水量、運ぶ用とためる用で分けるタンクの考え方、くみ置きした水を使い切る期間まで、判断の軸をまとめました。
携帯浄水器は「どんな水でも飲める道具」ではありません
断水が3日を超えると、困りごとの中身が変わってきます。飲み水は備蓄と給水所でなんとかなっても、手を洗う、食器をすすぐ、体を拭くといった「生活用水」が先に足りなくなるのです。農林水産省も家庭備蓄は最低3日分、できれば1週間分を勧めていますから、長引く前提で考えておきたいですね。
その場面で名前が挙がるのが携帯浄水器と給水タンクです。ただ、携帯浄水器には先に押さえておきたい前提があります。これはもともと登山やキャンプで使われてきた道具で、濁りや砂を取るための「ろ過」が中心です。何を除ける設計なのかは製品ごとに違い、消毒そのものを置き換えるものではありません。ですから災害のときも、飲み水は保存水・給水所の水・水道水を基本にして、携帯浄水器はその手前を助ける道具と位置づけるのが安全です。この前提のうえで、判断の軸を順に見ていきましょう。
判断の軸
1. 足りなくなるのはどの水か、先に分ける
水は用途ごとに、必要な量ときれいさが違います。まとめて「水が必要」と考えると、量を見誤りやすくなります。
| 用途 | 数量の目安 | 求められるきれいさ |
|---|---|---|
| 飲む・調理する | 1人1日3リットル(首相官邸・農林水産省) | 飲用に適した水 |
| トイレを流す | 1人1日5回分(東京都) | 携帯トイレを使えば水は不要 |
| 洗う・拭く・流す | 公的な目安はなし | 用途に応じて。飲用ほどは求めない |
ここで分かるのは、携帯浄水器が効いてくるのは3つ目の行、つまり生活用水だということです。飲む量は人数と日数で計算できます(飲料水の必要量の計算で出せます)し、トイレは携帯トイレを備えれば水を使わずに済みます。用途ごとに分けて数える考え方は断水への備えでくわしく扱っています。
2. 「何を除ける設計か」を表示で確かめる
家庭用の浄水器には日本産業規格(JIS S 3201「家庭用浄水器試験方法」)にもとづく試験方法があり、除去できる対象物質が表示されます。一方、携帯型やアウトドア向けの製品はこの枠組みの外にあるものもあります。
見るべきは、除去や保持の対象として何が書かれているかです。濁りや砂は多くの製品が対象にしていますが、ウイルスや溶けている化学物質は含まれない製品もあります。「川や池の水をそのまま飲める」と読み取れる表示でなければ、そう使わないのが前提です。
飲用に回すことを考えるなら、ろ過したうえで加熱するなど、自治体や水道事業者の案内に沿った手当てを重ねることになります。
3. ろ過できる総量と、使える期間
携帯浄水器の性能表示でいちばん実用的なのは、総ろ過水量(カートリッジ1本で何リットルまで使えるか)と流量(1分あたり何リットル出るか)です。
- 総ろ過水量が小さい製品は、生活用水のように量を使う場面ではすぐ使い切ります。何リットル必要かを先に数えてから選びます
- 流量が小さいと、バケツ1杯を作るのに時間がかかります。ストロー型のように「その場で少量」を前提にした製品は、まとめて作る用途には向きません
- カートリッジには使用期限や、開封後に使い切る目安が示されている製品があります。備蓄として置くと一度も使わずに期限が来ることも起こりますから、入れ替えの時期をメモしておくと安心です
4. 手数と、電気がいらないか
停電と断水は同時に来ることがあります。ですから、電池や電源をあてにせず、電気を使わずに動くことは見ておきたい点です。
操作の手数も使い勝手を左右します。ポンプを押す、袋を高いところに吊る、ボトルに入れて押し出す──どれも「片手がふさがるか」「何分かかるか」が違います。家族の誰が使うことになるかを思い浮かべて選びましょう。
5. タンクは「運ぶ用」と「ためる用」を分ける
給水タンクという言葉はふたつの役割をまとめて指していて、ここを分けないと容量を決められません。
- 運ぶ用:給水所から自宅まで水を持ち帰るためのもの。水1リットルは約1キログラムですから、運べる重さが上限になります。背負えるタイプが中心で、くわしくは給水袋・ウォータータンクの選び方にまとめました
- ためる用:家の中に生活用水を置いておくためのもの。運ぶ必要がないので、容量を大きく取れます。折りたためるタンクなら、使わないときは薄くしまえます
ためる用の水は、浴槽に張った水でも代わりになります。台風の接近や水道工事の予告など断水が予想できるときに、前日のうちにためておく方法は手軽です。ただし小さなお子さんがいるご家庭では溺れるおそれがあるので、ふたを閉める、浴室の入口を開けたままにしないといった配慮が必要です。難しければ、ふたのできるタンクに切り替えるほうが安心です。
6. ためた水を使い切る期間
くみ置いた水道水は、保存水のように長くは置けません。東京都水道局は、塩素の消毒効果は直射日光を避けた常温で3日程度、冷蔵庫で10日程度持続するとしています。期間が過ぎた水は、掃除や洗濯、トイレを流すのに使えばむだになりません。
くみ置くときは、清潔でふたのできる容器に、空気に触れないよう口元までいっぱいに入れます。このとき浄水器を通したり沸かしたりすると消毒用の塩素が抜けてしまうので、蛇口から直接入れてください。携帯浄水器とくみ置きは、役割が逆向きなわけですね。
7. 置き場所と、年に1回の点検
折りたためるタンクは、長く折りたたんだままにしておくと折り目に沿ってひびが入り、水を入れたときに漏れることがあります。年に1回、水を入れて漏れがないか確かめ、点検した日を書いておきましょう。携帯浄水器も、箱に入れたままだとカートリッジの期限が過ぎてしまいます。飲料水の備蓄と同じ場所にまとめ、期限の入れ替えのときに一緒に見る習慣にしておくと忘れません。
店舗・事務所の場合
店舗や事務所では、手を洗う水とトイレの水が止まると営業の判断にすぐ関わってきます。来客用の飲み水は保存水で確保し、浄水器やためる用のタンクは厨房・洗い場・清掃の生活用水として位置づけると整理しやすくなります。誰が給水所へ行くか、容器をどこに置いているかを紙に書いて貼っておくと、担当者が不在の日でも動けます。
基準を満たすタイプの例
順位ではなく、上の軸で分けたタイプの例です。どれが合うかは、住まいの階数と、生活用水をどれだけ使う家かで決まります。
| タイプ | 向いている状況 | 見ておく点 |
|---|---|---|
| ポンプ式の携帯浄水器 | 浴槽やバケツの水から、まとめて生活用水を作りたい | 総ろ過水量、1分あたりの流量、押す力、電気がいらないか |
| 重力式(袋を吊る型) | 作業の間に別のことをしたい。家族の人数が多い | 吊る場所、満水の袋の重さ、ろ過にかかる時間 |
| ボトル一体型・ストロー型 | 持ち出し袋に入れて、外出先で少量を使う | 1回に作れる量、総ろ過水量、除去や保持の対象の表示 |
| 折りたためる貯水タンク(10〜20リットル) | 家の中に生活用水をためておく。収納場所が狭い | 折り目のひび、自立するか、ふたの密閉 |
| 硬いポリタンク(15〜20リットル) | 戸建て・1階で、屋外や物置に置ける | 満水で動かす手段、直射日光を避けられるか |
このサイトでは、実際に使っていない製品の使用感は書いていません。最後は仕様の表示で、除去や保持の対象、総ろ過水量、満水の重さが自宅の条件に合うかを確かめて選んでください。容器は飲み水用と生活用水用を分け、飲み水用には「飲用」と書いておくと、家族の誰でも迷いません。
次にやること
- 用途ごとに必要な水の量を数える。飲む量は人数と日数で決まります。トイレは携帯トイレに置き換えると、水の量がぐっと減ります。
- ためる場所を1つ決める。折りたためるタンクか浴槽か、どちらを使うかを先に決めておくと、断水の知らせを聞いてから迷いません。
- 携帯浄水器を備えるなら、表示を2つ見る。除去や保持の対象と、総ろ過水量です。期限のあるカートリッジは、入れ替えの時期を容器に書いておきます。
参考資料
- 首相官邸「災害が起きる前にできること」(https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html)
- 農林水産省「家庭備蓄ポータル」(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/)
- 東京都水道局「くみ置く際の留意事項」(https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/shinsai/sonae/kumioki)
- 東京都「もしもの時に困らないトイレの備蓄」(2025年9月)(https://www.koho.metro.tokyo.lg.jp/2025/09/01-1.html)