公開 2026-10-09
給水袋・ウォータータンクの選び方:給水所から運べる容量と背負い方
給水所で配られるのは水だけで、容器は自分で持っていきます。水1Lは約1kgという重さから決める容量、背負えるタイプを軸にする理由、注水口とコック、くみ置きした水を使い切る期間まで、7つの判断軸をまとめました。
給水袋は「水をもらう道具」ではなく「運ぶ道具」です
断水が続くと、自治体が給水車や給水所で水を配ります。このとき配られるのは水だけで、入れる容器は自分で持っていくことになります。東京都水道局も「お越しの際には、水を入れる清潔な容器をご用意ください」と案内しています。容器がないと、歩いて行っても水を持ち帰れないわけです。
もうひとつ見落としやすいのが重さです。水は1リットルで約1キログラム。20リットルのタンクは満水で約20キロになり、持ち上げて歩くのは大人でも難しい重さですね。ですから給水袋とウォータータンクは、「何リットル入るか」より「何リットルなら自宅まで運べるか」から考えると選びやすくなります。
東京都水道局は、断水したときに住まいからおおむね半径2キロの距離内に1か所、「災害時給水ステーション」を開設するとしています(都内213か所)。往復で4キロ前後を、水を持って歩く前提になります。この距離を思い浮かべながら、判断の軸を順に見ていきましょう。
判断の軸
1. 何リットル運ぶことになるかを先に数える
飲み水と調理用の目安は1人1日3リットルです(首相官邸・農林水産省)。4人家族の3日分なら36リットル、7日分なら84リットル。家族の人数と日数からの必要量は飲料水の必要量の計算で確かめられます。
ここで押さえておきたいのは、給水袋は備蓄の代わりにはならないということです。84リットルを給水所から運ぶとなると、10リットルずつでも8往復。先に家に置いておくぶんを増やしておくほうが無理がありません。給水袋は「足りないぶんを足しに行くための道具」と考えて、容量を決めます。
2. 1個の容量は「持って歩ける重さ」で決める
水の重さは、容量とほぼ同じキログラム数になります。
| 容量 | 満水の重さ | 運び方の目安 |
|---|---|---|
| 3リットル前後 | 約3キロ | 片手で提げられる。子どもや、力に自信のない方でも運べる |
| 5〜10リットル | 約5〜10キロ | 背負えるタイプなら大人1人で運べる。往復の主力になる容量 |
| 15〜20リットル | 約15〜20キロ | 提げて歩くのは難しい。台車やキャリーカートと組み合わせる前提 |
東京都水道局は「3リットル(3キログラム)の水は重いので、背負えるタイプの給水袋や、空のペットボトルとリュックサックなどをご用意ください」と案内しています。公的な案内でも3リットルを「重い」と書いているくらいですから、大容量を1つではなく、中くらいの容量を複数そろえるほうが現実的です。
3. 背負えるか、提げるか、転がすか
- 背負うタイプ(リュック型・肩ひも付き):両手が空くので、階段や段差のある道でも体を支えられます。優先度が高いのはこのタイプです
- 手提げタイプ(ハンドル付きの袋):3〜5リットルの軽い容量向け。左右に1つずつ持つと体のバランスが取りやすくなります
- 硬いポリタンク・キャスター付きのタンク:平らな道で大容量を運べますが、段差と階段では使えません。戸建てや1階の住戸向けです
エレベーターが止まっている集合住宅の上の階では、背負えるタイプが中心になります。マンションでの水の確保はマンションの在宅避難にまとめました。
4. 口の大きさと、注ぎ出しやすさ
給水所では蛇口やホースから水を入れます。注水口が小さいと時間がかかり、後ろに並んでいる人を待たせることにもなります。口が広く、入れている間に自立するか立てかけられるものだと作業が楽です。
注ぎ出す側も見ておきましょう。コック(蛇口)が付いていれば、鍋やコップに少しずつ分けられます。コックがない袋型は、傾けて注ぐときに2人がかりになりがちなので、小さめの容器を1つ併せて持っておくと家の中で使いやすくなります。
5. たたんだときの大きさと、素材の劣化
折りたためる袋タイプは、使わないときは薄くたためて引き出しにも入ります。硬いポリタンクは場所を取りますが、自立するぶん注水と保管が楽です。収納場所に余裕がなければ袋タイプ、物置やベランダに置けるならタンク、という分け方になります。
袋タイプは、長く折りたたんだままにしておくと折り目に沿ってひびが入り、水を入れたときに漏れることがあります。年に1回、水を入れて漏れがないか確かめておくと安心です。
6. 飲み水用と生活用水用を分けておく
トイレを流す、体を拭く、洗い物をするといった生活用水は、飲み水ほどのきれいさを求めなくてよい一方、必要な量は多くなります。携帯トイレを用意しておけばトイレを流す水は要らなくなりますから(東京都は1人1日5回を目安としています)、生活用水の量は携帯トイレの備えとセットで決まります。水の役割を飲む・トイレ・洗うの3つに分けて数える考え方は断水への備えで扱っています。
容器は、飲み水用と生活用水用を分けて、飲み水用には「飲用」と書いておきましょう。お風呂の残り湯を入れた袋をそのまま飲み水に使うことは避けたいので、目印があると家族の誰でも迷いません。
7. くみ置きした水を使い切る期間
給水所の水も、蛇口からくみ置きした水道水も、保存水のように長くは置けません。東京都水道局は、塩素の消毒効果は直射日光を避けた常温で3日程度、冷蔵庫で10日程度持続するとしています。保存期間が過ぎた水は、掃除や洗濯に使えばむだになりません。
くみ置きのときは、清潔でふたのできる容器に、空気に触れないよう口元までいっぱいに入れます。浄水器を通したり沸かしたりすると消毒用の塩素が抜けてしまうので、蛇口から直接入れてください。日付をメモして貼っておくと、いつまで飲めるか迷わなくなります。長期保存を前提にするなら、くみ置きではなく保存水を備えるほうが向いています。
店舗・事務所の場合
店舗や事務所では、手を洗う水とトイレの水が止まると営業の判断にすぐ関わってきます。従業員が給水所へ往復することを考えると、背負えるタイプを人数分と、厨房や洗い場で使う大きめのタンクを分けて用意するのが現実的です。誰が取りに行くか、容器をどこに置いているかを決めておくと、当日に探さずに済みます。
基準を満たすタイプの例
順位ではなく、上の軸で分けたタイプの例です。どれが合うかは、住まいの階数と給水所までの道で決まります。
| タイプ | 向いている状況 | 見ておく点 |
|---|---|---|
| 背負える袋型(5〜10リットル) | 集合住宅の上の階。階段で運ぶ。まず1つ持つならこれ | 肩ひもの幅と縫い付け方、満水で背負えるか、注水口の広さ |
| 手提げの袋型(3〜5リットル) | 子どもや力に自信のない方も運ぶ。往復を分担する | ハンドルの強さ、自立するか、たたんだときの大きさ |
| コック付きのタンク型(10リットル前後) | 家の中で少しずつ注いで使いたい | コックの水漏れ、置いたときの高さ(流し台に載るか) |
| 硬いポリタンク(15〜20リットル) | 戸建て・1階。車や台車で運べる | 満水の重さを運ぶ手段があるか、置き場所、ふたの密閉 |
| キャスター付き | 平らな道が続き、段差が少ない | 段差での扱い、タイヤの大きさ、空のときの収納 |
このサイトでは、実際に使っていない製品の使用感は書いていません。最後は仕様の表示で、満水の重さと注水口の大きさが自宅の条件に合うかを確かめて選んでください。
次にやること
- 家から一番近い災害時給水ステーション(給水拠点)を調べる。市区町村や水道局のウェブサイトに載っています。歩く道の段差や坂も見ておくと、運べる容量が決まります。
- 背負えるタイプを1つ、家族の人数ぶん用意する。たたんだ状態でも場所を取らないので、飲料水の備蓄と同じ場所に入れておきます。
- 年に1回、水を入れて漏れを確かめる。折り目のひびと、コックからの水漏れを見ます。点検した日を袋に書いておくと次の目安になります。
飲料水と携帯トイレの必要量は、防災備蓄診断で家族の人数と住まいから数量まで出せます。
参考資料
- 東京都水道局「災害時に水を配る場所 ~災害時給水ステーション~」(https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/shinsai/kyoten)
- 東京都水道局「くみ置く際の留意事項」(https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/shinsai/sonae/kumioki)
- 首相官邸「災害が起きる前にできること」(https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html)
- 農林水産省「大事な水、どうやって備えますか?」(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/imadoki/imadoki02_10.html)