防災備蓄診断

公開 2026-10-06

マンションの在宅避難:断水・トイレ・エレベーター停止に備える備蓄の数量

マンションでは停電でポンプが止まり、断水することがあります。給水方式の2タイプの違い、排水管の点検が済むまでトイレを流さないという東京都の呼びかけ、携帯トイレ1人1日5回分の数え方、エレベーター停止を前提にした備蓄の厚みまでまとめました。

マンションの備えは「とどまる」ことから考えます

マンションにお住まいだと、大きな地震のあとに外へ出るべきか、家にいるべきか迷いますよね。東京都は、大きな地震が起こっても居室で生活ができる場合は「在宅避難」という選択肢もあるとしています。建物が無事なら、住み慣れた部屋で過ごせるほうが体への負担も少なくすみます。

ただ、マンションには戸建てとは違う困りごとがあります。水が出なくなる理由が2つあること、トイレをすぐには流せないこと、そしてエレベーターが止まることです。この3つを順番に見ていきましょう。

エレベーターが止まると、暮らしは階段の上に移ります

東京都は、マンション特有の被害としてエレベーターの停止を挙げています。階段を使うことになるため、けがをした人や体の不自由な人の移動が難しくなります。

止まる理由は2つあります。ひとつは停電です。もうひとつは地震そのもので、2009年9月28日以降に設置されたエレベーターには、揺れを感知してかごを最寄り階に止め、戸を開く「地震時管制運転装置」を設けることが義務づけられています(国土交通省)。閉じ込められないための仕組みですが、作動して止まったあとは、保守会社の点検が済むまで動かせません。

ここで大事なのは、買い出しに行けない・水を運び上げられない期間が生まれるということです。これに効く備えは、残念ながら「家の中の備蓄を厚くしておく」しかありません。上の階にお住まいなら、3日分ではなく1週間分を目安にしておくと、階段の往復を減らせます。

乗っているあいだに揺れを感じたときは、行き先のボタンをすべて押して、止まった階で降ります。扉が開かないときは、かご内のインターホンか非常ボタンで知らせて、無理に出ようとせず待ちます。

水が出なくなる理由は、2つあります

ひとつは水道そのものの断水です。もうひとつは建物側の事情で、停電でポンプが止まると、水道が無事でも蛇口から水が出なくなることがあります(東京都)。どちらが起こるかは、建物の給水方式で変わります。

給水方式水の流れ災害時に起こりやすいこと
直結給水方式(直圧・増圧)配水管の圧力で各戸へ。高い建物では増圧ポンプを使う貯留する水がないため、水道が断水するとそのまま水が出ない(東京都水道局)
貯水槽水道方式(受水槽・高置水槽)受水槽にためてポンプで屋上へ上げ、自然に流れ落ちる貯水槽に残っている水は使える。ただしくみ上げるポンプは電気で動く

ご自宅がどちらかは、管理会社か管理組合に聞けば分かります。「停電したとき水は出ますか」と一緒に確認しておくと、備える量の見当がつきます。

飲み水の目安は1人1日3リットルです(首相官邸・農林水産省)。4人家族の7日分なら84リットルになります。給水所から運ぶ場合、水は1リットルで約1キログラムですから、10リットルの容器はそれだけで10キロです。エレベーターが止まった状態で何度も階段を上るのは現実的ではありません。運ぶ回数を減らすために、先に家へ置いておくと考えるほうが安全です。水の役割を飲む・トイレ・洗うの3つに分けて数える方法は断水への備えにまとめています。

トイレは「まず流さない」から始めます

マンションでいちばん気をつけたいのがトイレです。東京都は、排水管の損傷に気づかずにトイレを使うと下の階に逆流するおそれがあるとして、「トイレはまず流さない」というルールを全戸で徹底することが大切だと呼びかけています。

浴槽にためた水で流す方法も、点検が済むまでは控えます。管理組合が「排水管の安全確認が済むまで流さない」と決めている建物もありますので、お住まいのルールを先に確かめておきましょう。

流さないとなると、必要になるのが携帯トイレです。目安は1人1日5回分です(東京都)。

携帯トイレは「1人1日5回」で計算します

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世帯ごとに必要な携帯トイレの回数1人3日で15回分、4人3日で60回分、4人7日で140回分。1人・3日15回分2人・3日30回分4人・3日60回分4人・7日140回分
東京都は「1日5個×3日分×家族の人数」を最低限の目安とし、1週間分の備蓄を勧めています。断水するとトイレは流せません。

出典:東京都「もしもの時に困らないトイレの備蓄」(2025年9月)をもとに編集部作成

4人家族で7日分なら140回分。かなりの数に見えますが、1箱にまとめて玄関の収納に入れておけば収まる量です。人数と日数から回数を出すだけなら携帯トイレの計算ツールが早く、選び方は携帯トイレの選び方にまとめています。

あわせて用意しておくと楽なのが、防臭袋とふた付きのバケツです。ごみの収集も止まりますから、使用済みの袋を数日ためておく場所を決めておくと、においの悩みがだいぶ減ります。ベランダや玄関の土間など、直射日光の当たらない屋外に近い場所が向いています。

共用の備蓄と、わが家の備蓄は別に数えます

管理組合が防災倉庫を持っている建物もありますが、中身は発電機や工具、救助用の資機材が中心で、各戸の食料や水まではまかなえないことがほとんどです。量と中身、鍵を誰が持っているか、配る担当が決まっているかを一度確認して、足りない分は自分の家で持つと割り切るほうが確実です。

東京都は、生活物資の備蓄はまず3日分を目標に、1週間やその先も見据えるよう勧めています。また、住民同士でふだんからコミュニケーションをとり、いざというときに助け合える関係をつくっておくことも挙げています。上の階に高齢の方が住んでいるかどうかを知っているだけでも、エレベーターが止まったときの動きが変わります。

在宅避難そのものが成り立つ条件(建物の安全・室内の安全・備蓄)は在宅避難の準備で整理しています。

まとめ:今日できること

  1. **管理会社か管理組合に、建物の給水方式と「停電時に水が出るか」を聞く。**答えによって、ためておく水の量が変わります。
  2. **携帯トイレの必要回数を、家族の人数×日数×5回で出す。**足りない分を書き出しておきます。
  3. **ベランダの避難ハッチと隔て板の位置、階段の場所を家族で確認する。**費用はかからず、その日のうちにできます。

マンション高層階を前提にした備蓄の数量は、マンション高層階の防災備蓄診断から確かめられます。

参考資料

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