防災備蓄診断

公開 2026-09-29

高齢・介護が必要な家族がいる家の防災備蓄:食べ慣れたもの、食べやすさ、避難のタイミング

基本の備えに、食べ慣れたおかゆや即席スープ、栄養補助食品を。かむ・飲み込む力が弱いなら介護食品ととろみ調整食品。水分と口の中の手入れ、入れ歯、警戒レベル3「高齢者等避難」、避難行動要支援者名簿と個別避難計画まで、農林水産省と内閣府の資料をもとにまとめました。

基本は同じ。そのうえで「食べ慣れたもの」と「食べやすさ」

農林水産省のガイドは、高齢者がいる家庭の備えは、一般の家庭の備えとそれほど大きな違いはない、としています。水、カセットコンロとボンベ、主食・主菜・副菜のバランスを考えた食品をそろえるのが土台です。

そのうえで、高齢の家族がいる家庭では、次のことを足しておくと安心です。

  • ふだん食べ慣れたもの、体が弱ったときでも食べられるもの
  • かむ・飲み込む力が弱くなっている家族がいるなら、それに合った食品
  • 栄養を補う食品
  • 水分をとるための工夫と、口の中の手入れ
  • 避難を始めるタイミングと、手助けが必要なときの相談先

この記事では、農林水産省「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」(平成31年3月)と、内閣府の避難情報・避難行動要支援者の資料をもとにまとめます。

食べ慣れたものを、多めに

ガイドは、高齢者がいる家庭で備えておくと安心なものとして、次のものを挙げています。

  • レトルトやアルファ米のおかゆ
  • 缶詰・レトルト食品・フリーズドライ食品
  • インスタントのみそ汁、即席スープなど
  • 食べ慣れた乾物
  • 栄養補助食品
  • 好物の食品、飲み物

レトルト食品が苦手な高齢者も多いため、ふだんから試して、おいしいと思えるものを見つけておくことが大切だとしています。缶詰にも甘さや辛さなどさまざまな味付けがあります。体が弱ったときにどんなものが食べたくなるかを想像して、選んでおきます。

好物の食品や飲み物を多めに買い置きし、賞味期限の古いものから食べて買い足していくローリングストックなら、ふだん使いの食品のまま備えられます。

栄養補助食品と、フレイルの予防

災害のときは手に入る食べ物が限られ、ストレスで食欲も落ちます。ガイドは、高齢者は食事がのどを通らなくなって必要な栄養がとれなかったり、低栄養に気づきにくかったりすることで、サルコペニア(加齢に伴う筋力・筋肉量の減少)やフレイル(健康な状態と介護が必要な状態の中間の段階)になりやすくなることを心配しています。

そのため、高齢者がいる家庭では栄養補助食品を用意しておくとよい、としています。3回の食事で足りない分を補えるように、ふだんから試して、好みのものを備えておきます。

ガイドには、フレイルの基本チェックリスト(抜粋)が載っています。

  • 転ぶことへの不安は大きいか
  • 6か月で2〜3kg以上の体重の減少があったか
  • 半年前に比べて、固いものが食べにくくなったか
  • 昨年と比べて、外出の回数が減っているか
  • 周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われるか
  • (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない

当てはまる方や、最近体が弱ってきて心配な方は、市町村や保健所の管理栄養士・栄養士、保健師に相談するよう勧めています。

かむ・飲み込む力が弱くなっている家族がいるなら

介護食品を備える

ガイドは、かむことや飲み込むことが難しくなった人向けの介護食品を、スマイルケア食という愛称で紹介しています。かむ力・飲み込む力に合わせて分類されていて、どれが合うかは、医師・歯科医師・管理栄養士などの専門職に相談して選ぶよう勧めています。

ドラッグストアなどで売られている介護食品には、「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」といったユニバーサルデザインフードの表示があり、選ぶときの参考になります。

とろみ調整食品

お茶やみそ汁、スープなどに混ぜてとろみをつける粉末の食品です。飲み込むときにむせやすい人の飲み物・食べ物を、飲み込みやすくします。ガイドは、災害のときに避難所で流行する肺炎は誤嚥性肺炎によるものが多いことが分かってきたとして、その予防のためにも、とろみ調整食品を備えておくよう勧めています。

食べやすくする工夫

  • 横になったままではなく、座るか、少し体を起こして食べる
  • 食事の前に、少しの水で口をうるおす
  • 食べ物と水分を交互にとる
  • 袋に入った状態でつぶしたり、ちぎったりして、食べやすい大きさにする
  • ゼリー飲料やポタージュスープなど、とろみのあるものをとる
  • レトルトのおかゆは水分でむせることがあるので、介護食品のごはんと混ぜて温め、ちょうどよい軟らかさにする。ふだんから試して、調整の仕方に慣れておく

水分をしっかりとる

避難生活では、飲み水が足りないことやトイレの数が足りないことから、水分をとるのを控えがちです。ガイドは、水分が足りないと、疲れやすい、頭痛、便秘、食欲の低下、体温の低下などが起きやすくなるとして、水分をしっかりとることが大切だとしています。

トイレを気にして水分を控えずにすむように、飲料水と一緒に、携帯トイレを人数と日数分そろえておきます。

口の中の手入れと、入れ歯

災害のときも、風邪や肺炎を防ぐために口の中の手入れが大切です。ガイドは、歯みがきやうがいをし、入れ歯はできれば毎食後、少なくとも1日に1度は外して洗うよう勧めています。入れ歯の具合が悪い方は、早めに医療や支援の担当者に相談します。

少ない水で歯みがきをする方法

  • ペットボトルの水を歯ブラシに少しこぼし、ブラシに水分を含ませてからみがく
  • コップに水を入れて、うがいをする
  • ブラシの汚れが多いときは、ティッシュなどでふき取りながらみがく

歯ブラシがないとき

  • ペーパータオルやガーゼを少しの水でぬらし、歯の表面をこすって汚れを取る
  • 別のペーパータオルに替えて、口の中をひととおりやさしくふく
  • 口の中の手入れ用のウェットティッシュでふき取る方法もある

避難のときに入れ歯を忘れないよう、手入れの道具と一緒に、すぐ持ち出せる場所を決めておきます。

体を動かす

避難生活では、体を動かす量が減りがちです。ガイドは、足や足の指を動かす、かかとを上下に動かす、室内や外を少し歩く、軽い体操をする、といったことを勧めています。

避難を始めるのは「警戒レベル3」

大雨などのときに市町村が出す避難情報のうち、**警戒レベル3「高齢者等避難」**は、高齢者や障害のある人など、避難に時間がかかる人が、危ない場所から避難を始めるタイミングです(内閣府「避難情報のポイント」)。警戒レベル4「避難指示」を待たずに動き始めます。

ただし、安全な場所にいる人は、避難場所に行く必要はありません。自宅が浸水や土砂災害の想定区域に入っているかを、ハザードマップで先に確かめておきます。

一人で避難するのが難しい家族がいるなら

市町村は、災害のときに自分で避難することが難しい高齢者や障害のある人などの避難行動要支援者名簿を作ることが、法律で義務づけられています(平成25年の災害対策基本法の改正)。さらに令和3年の改正で、一人ひとりの避難の方法を決める個別避難計画を作ることが、市町村の努力義務になりました(内閣府)。

介護が必要な家族がいて、避難の手助けが必要なら、お住まいの市町村の福祉や防災の担当の窓口に、名簿への登録と、個別避難計画づくりについて相談できます。ケアマネジャーなど、ふだんかかわっている人にも、災害のときにどうするかを話しておきます。

在宅で酸素濃縮器などの医療機器を使っている場合は、在宅で医療機器を使う家庭の停電対策も読んでください。

まとめ

  • 基本の備え(水・カセットコンロ・主食・主菜・副菜)に、食べ慣れたものを多めに足す
  • おかゆ、即席スープ、食べ慣れた乾物、栄養補助食品を。ふだんから試しておく
  • かむ・飲み込む力が弱いなら、合った介護食品と、とろみ調整食品を
  • トイレを気にせず水分をとれるよう、携帯トイレも人数と日数分
  • 入れ歯は少なくとも1日1度外して洗う。持ち出す場所を決めておく
  • 避難は警戒レベル3「高齢者等避難」で始める
  • 避難に手助けが必要なら、市町村に名簿と個別避難計画を相談する

高齢の家族がいる家庭で何がどれだけ足りないかは、高齢の家族がいる家の防災備蓄診断で確かめられます。

参考資料

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