防災備蓄診断

公開 2026-09-23

感覚過敏・発達障がい・認知症のある家庭の備え:物より「いつもの環境」を守る

避難所の音・光・人の多さが難しい場合、在宅避難を第一に置きます。そのための家の安全確認、イヤーマフや慣れた物などの環境を保つ品目、ヘルプマークとヘルプカード、福祉避難所の運用を自治体に確認する項目まで。

感覚過敏のあるお子さん、発達障がいのある方、認知症の方がいるご家庭では、備えの重心が「物をそろえる」から**「いつもの環境を保つ」**へ移ります。

国のガイドラインも、障害のある人などは一般の避難所で過ごすことに困難を伴うことがあるとしています。だから在宅避難を第一に置き、そのために必要な準備を先にします。

この記事は医療や福祉の助言に代わるものではありません。支援の受け方は、かかりつけ医やケアマネジャー、相談支援専門員にご相談ください。ここでは、家でできる準備と、平時に確認しておくことを書きます。

なぜ避難所が難しいのか

体育館の環境は、次の条件が重なります。

  • 音:数百人の話し声、咳、足音、アナウンス。夜も静かになりません
  • 光:照明が一晩中ついていることがあります
  • 人との距離:見知らぬ人と数十センチの距離で過ごします
  • 匂い:食事、トイレ、人
  • ルーティンの崩壊:食事・入浴・就寝の時間が決まりません

感覚過敏のある方にとっては、これらが強い苦痛になります。認知症の方は、環境が変わることで混乱が強まることがあります。

「我慢すればいい」で済む話ではないので、最初から在宅避難を前提に組むほうが現実的です。

だから、家の安全が先になる

在宅避難を選ぶには、家が安全でなければなりません。備蓄を増やす前に、ここを確認してください。

在宅避難ができるかは、3つで決めます

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在宅避難の可否を決める3つの条件建物が無事、浸水と土砂のおそれがない、火災のおそれがない。すべて満たせば在宅避難、1つでも欠ければ避難所へ。1建物が無事か傾き・大きなひび・ドアの開閉2浸水・土砂のおそれがないかハザードマップで確認3火災のおそれがないか近隣の出火・ガスのにおい3つとも満たす在宅避難ができます1つでも欠ける避難所へ向かいます在宅避難でも、水・トイレ・情報は自力で確保することになります。備える量は避難所前提より多くなります。
1つでも当てはまらなければ避難所へ向かいます。判断に迷う状態なら、明るいうちに避難するほうが安全です。建物の被害は外から見ただけでは分からないこともあります。

出典:防災備蓄診断 編集部作成

  1. 建物:1981年6月以降の新耐震基準か。浸水想定区域・土砂災害警戒区域に入っていないか
  2. 室内:家具が固定されているか。寝ている場所に倒れてくる物、落ちてくる物がないか
  3. ガラス:窓や食器棚に飛散防止フィルムが貼ってあるか

このうち1が満たせない場合は、在宅避難という選択肢そのものが取れません。家の耐震改修が難しい場合でも、寝室だけを守る耐震シェルターや防災ベッドという方法があります。 設置費用に補助を出している自治体が多くあります(防災の補助金・助成金 全国一覧)。

2と3は費用が小さく、効果が大きい部分です。家具の固定は、器具の支給や費用の補助をしている自治体もあります(補助金一覧)。

詳しくは在宅避難の準備にまとめています。

用意するもの:環境を保つための品目

一般的な備蓄(水・食料・携帯トイレ・明かり)に加えて、次のものを考えてください。

音を減らすもの

  • イヤーマフ、耳栓、ノイズキャンセリングのイヤホン。ふだん使っているものがあれば、それを持ち出せる場所に置く
  • 予備を1つ持つ。なくすと代わりがききません

停電するとノイズキャンセリング機能が使えなくなる製品があるので、電気を使わないイヤーマフも1つあると確実です。

光を調整するもの

  • アイマスク、遮光カーテン
  • 逆に、真っ暗が苦手な場合は常夜灯になる小さなライト。乾電池式のものを選びます

避難所でも家でも、照明を自分で調整できる状態にしておくのが目的です。

いつもの物

  • 使い慣れたタオル、毛布、ぬいぐるみ、おもちゃ
  • これらは代わりがききません。洗い替えを含めて複数用意し、1つは持ち出し袋に入れておきます

「いつもの物」は、ほかの家庭にとってはただの日用品です。支援物資としては届きません。自分で用意しておくしかない部分です。

いつもの食べ物

偏食がある場合、配給や炊き出しが食べられないことがあります。ふだん食べているものを多めに持ち、食べた分を買い足すやり方にしてください(ローリングストック)。

食べられるものが数種類に限られている場合は、その数種類を日数分、丸ごと自給する前提で数えます。

薬

向精神薬や抗てんかん薬など、切らすと影響が大きい薬がある場合は、残量に余裕を持たせてください。処方の日数を延ばせるかは主治医の判断になります。

薬の名前と用量はお薬手帳に残し、手帳を撮影してスマートフォンにも入れておきます。

伝える準備をする

本人が自分で説明できない状況を想定します。

ヘルプマークとヘルプカード

ヘルプマークは、外見からは分かりにくい援助や配慮を必要としている方のための目印です。東京都が作成し、都以外の全道府県でも導入されています。受け取れる場所は都道府県ごとに違うので、お住まいの都道府県のホームページで確かめられます。

区市町村などが配布しているヘルプカードに、次のことを書いておきます。

  • 名前、年齢、連絡先
  • 苦手なこと(大きな音、急に触られること、など)
  • 落ち着く方法(具体的に。「静かな場所に移す」「いつものタオルを渡す」など)
  • 話しかけ方のコツ
  • 服用している薬
  • かかりつけ医と緊急連絡先

「何ができないか」より「どうすれば落ち着くか」を書くと、支援する側が動けます。

出典:東京都福祉局「ヘルプマーク」

迷子・行方不明への備え

認知症の方は、災害時の混乱のなかで行方が分からなくなることがあります。

  • 名前と連絡先を書いたものを、衣服や持ち物に縫い付ける・貼る
  • 靴に名前を入れる(履いて出ることが多いため)
  • 最近の写真を、家族のスマートフォンに保存しておく
  • 自治体の見守り・SOSネットワークに登録する

小さなお子さんも同じです。迷子札を、ふだん身につけるものに付けておきます。

お住まいの自治体で確かめること

ここは全国共通の答えがない部分です。 自治体ごとに運用が違うので、平時に確認してください。

  1. 福祉避難所がどこにあるか。 指定されている施設名
  2. そこへ直接行けるのか。 一次避難所を経由する運用の自治体もあります。国は直接避難を進める方向でガイドラインを示していますが、実際の運用は市区町村ごとに違います
  3. 事前に利用希望を登録する仕組みがあるか
  4. 避難行動要支援者名簿に載っているか。 個別避難計画が作られているか
  5. 一次避難所に、静かに過ごせる部屋(要配慮者スペース)が用意される予定があるか

聞く先は、障害福祉課・高齢福祉課・防災担当課のいずれかです。ケアマネジャーや相談支援専門員がついている場合は、その方に聞くのがいちばん早いことが多いです。

出典:内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」

平時にやっておくと効くこと

  • 避難先を一度見に行く。 初めての場所は不安が大きくなります。福祉避難所や、親族の家など、行く可能性のある場所を先に見ておく
  • 親族・知人の家を候補に入れる。 避難所以外の選択肢があるほうが現実的です
  • 近所の人に事情を伝えておく。 災害時に助けを求められる相手が1人いるだけで、選択肢が変わります
  • 停電時の想定を一度やってみる。 夜に照明を消して、ランタンだけで1時間過ごしてみる。本人が耐えられるかが分かります

最後の項目は、備蓄を買い足すより先に分かることが多い部分です。

まとめ

  • 避難所は難しい前提で、在宅避難を第一に置く
  • そのために家の安全(耐震・家具固定・ガラス)を先に確認する
  • 物は「環境を保つもの」を中心に。イヤーマフ、遮光、いつもの物、いつもの食べ物
  • いつもの物は支援物資では届かないので、複数用意する
  • ヘルプマークとヘルプカードで、本人以外に伝わる形にする
  • 名前と連絡先を身につける(行方不明への備え)
  • 福祉避難所の場所と、そこへ直接行けるかを市区町村に確認する

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