公開 2026-09-22
津波から逃げるための備え:警報が出たら何を持ってどこへ避難するか
津波の備えは、備蓄より先に「いつ動くか・どこへ逃げるか」を決めることから始まります。警報を待たずに動き出す合図、徒歩で行ける避難先の決め方、背負って階段を上れる持ち出し袋の中身、戻ってよい時期までをまとめました。
津波の備えは、買うものより「決めておくこと」が先です
海の近くに住んでいたり、実家が沿岸部にあったりすると、津波のことは気になりつつ、何から手をつければいいのか分かりにくいですね。津波の備えは、備蓄を増やすことよりも先に、揺れたときに誰がどこへ向かうかを決めておくことが中心になります。11月5日は津波防災の日です。少し早いですが、今のうちに家族で話しておきましょう。
公的な資料が示す津波避難の考え方は、おおむね3つに整理できます。すぐに動く・できるだけ高いところへ・逃げたら戻らないの3つです。この記事では、この3つをわが家の事情に当てはめる手順と、持ち出すものの決め方をまとめます。
逃げ始める合図を、警報より前に決めておく
震源が近い場合、津波が数分で届く地域があります。気象庁の津波警報は、地震発生からおよそ3分後(日本近海で起きる一部の地震では約2分後)の発表を目標としていますが、それでも警報と津波がほぼ同時になることはあり得ます。警報を聞いてから考え始めると、動き出しが遅れます。
そこで、警報を待たずに動き始める合図を先に決めておきます。
- 海岸や河口の近くで強い揺れを感じたとき
- 揺れが弱くても、ゆっくりした揺れが長く続いたとき
- 海水浴場などで津波フラッグ(赤と白の格子模様の旗)を見たとき
どれも、発表を待たずに高いところへ移動を始めてよい合図です。空振りになっても構いません。戻ってくればいいだけですから、「迷ったら動く」を家族の約束にしておくと決めやすくなります。
警報の種類と、そのときの行動
| 発表 | 予想される高さの区分 | とる行動 |
|---|---|---|
| 大津波警報 | 10m超・10m・5m | 沿岸部と川沿いから離れ、できるだけ高い場所へ |
| 津波警報 | 3m | 同じく高台か、津波避難ビル・津波避難タワーへ |
| 津波注意報 | 1m | 海の中にいる人はすぐ海から上がり、海岸から離れる |
地震の規模がすぐに確定できないときは、第一報が数字ではなく「巨大」「高い」という言葉で出ることがあります。この場合は最大級の警戒が呼びかけられていると考えて動きます。なお津波注意報の1mでも、海の中では速い流れが生じて岸に戻りにくくなります。「1mなら大丈夫」とは考えないでおきましょう。
どこへ逃げるかを、地図の上で決めておく
避難先は高ければどこでもよいわけではなく、歩いて行ける範囲にあることが条件になります。地図を開いて、次の3つを決めておきます。
- 自宅から徒歩で行ける避難先を2か所(昼と夜で通れる道が変わることがあります)
- 職場・学校からの避難先(家族それぞれの分)
- 落ち合う場所と、連絡がつかないときのルール(災害用伝言ダイヤル171の使い方も一度試しておくと安心です)
浸水の想定は、国土交通省の重ねるハザードマップで「津波」を表示すると、各機関が公表している津波浸水想定を地図の上で確認できます。あわせて自治体の津波ハザードマップを見ると、指定されている津波避難場所・津波避難ビルの位置が分かります。どちらもJISの図記号で表示されていて、外出先でも探せる目印になります。
移動は徒歩が基本です。車は渋滞で動けなくなると、そのまま身動きが取れなくなります。ただし高台まで距離がある地域では、自治体が車での避難を計画に含めていることもあります。自分の地域がどちらの考え方なのかは、市町村の津波避難計画で確認できます。
何を持って出るか:重さを先に決める
避難の途中で荷物が重いと、それだけ逃げ足が遅くなります。津波の持ち出し袋は、背負って階段を駆け上がれる重さを上限にして中身を決めます。
- 両手が空くリュック
- 履き慣れた運動靴
- スマホとモバイルバッテリー
- 小型のラジオ。停電すると避難先での情報源になります
- 常備薬と、お薬手帳のコピー
- ホイッスル、小さなライト
- 現金(小銭を含む)
- 身分証や、医療機関で使う書類(マイナンバーカードなど)の写しを防水ケースに入れたもの
- 飲み水は小さなペットボトルを少しだけ
水や食料をたくさん入れたくなりますが、津波避難でまず要るのは動ける軽さです。3日分の備蓄は、警報が解除されて自宅に戻れたときや、在宅避難に切り替えるときのために家へ置いておきます。そして、いちばん大事な約束がひとつ。持ち出し袋を取りに戻らないことです。玄関のすぐ手の届く場所に置いておけば、取りに戻る理由がなくなります。
逃げたあと、いつ戻るか
津波は繰り返し押し寄せます。第1波が最大とは限らず、あとから来た波のほうが高かった例もあります。ですから、警報・注意報が解除されるまでは避難先にとどまるのが原則です。水が引いたように見えても、次の波までの間であることがあります。
気象庁は、最大の波が観測されるまで数時間以上かかることもあるとしています。避難先で待つ時間を見込んでおくと、持ち物の見直しがしやすくなります。高台の広場や避難ビルの屋上は風が通って体が冷えますから、薄手の上着かアルミ保温シートを1枚入れておくと安心です。スマホの電池は情報収集で早く減るので、充電手段も1つ。避難先で待つ時間があることを織り込んでおくのが、津波避難の持ち物の考え方です。
店舗や事務所が浸水想定区域にある場合は、従業員とお客さまの避難先を決めて、見える場所に貼っておくと当日の判断が早くなります。このとき、「ここまでやったら店を出る」という線もあわせて決めておきます。火の元とシャッターの確認を丁寧にやりすぎて出遅れるのは、避けたい形です。手順は1枚の紙にまとめ、避難先までの経路を一度歩いておくと、紙の内容が現実に合っているかを確かめられます。
まとめ:今日できること
- 重ねるハザードマップで、自宅と職場の津波浸水想定を見る
- 徒歩で行ける避難先を2か所決めて、家族に共有する
- 持ち出し袋を玄関に置き、背負って階段を上れる重さか確かめる
決めごとは一度作ればしばらく使えます。年に一度、津波防災の日のあたりに見直す日を作っておくと、家族の顔ぶれや通学先が変わっても追いつけます。
参考資料
- 気象庁「津波警報・注意報、津波情報、津波予報について」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/joho/tsunamiinfo.html)
- 気象庁「津波から身を守るために」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/tsunami_bosai/index.html)
- 気象庁「津波フラッグ」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/tsunami_bosai/tsunami_bosai_p2.html)
- 内閣府「津波防災の日」(https://www.bousai.go.jp/jishin/tsunami/tsunamibousai/tsunamibousaiday.html)
- 内閣府「平成28年版 防災白書」避難場所等の災害種別図記号の標準化について(https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h28/honbun/1b_1s_02_03.html)
- 消防庁「市町村における津波避難計画策定指針」(https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/tuchi2503/pdf/250311_sai_1-2.pdf)
- 総務省「災害用伝言サービス」(https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/dengon.html)
- 国土交通省 ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)(https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/maps/index.html)