公開 2026-09-23
食物アレルギーのある家庭の防災備蓄:避難所の食事が使えない前提で数える
自治体の備蓄食がアレルゲン対応とは限らず、炊き出しは原材料が分かりません。日数を丸ごと自給する前提での数量の出し方、調理手段がいる理由、支援カード、自治体に電話で確認することまでまとめました。
食物アレルギーのある家庭の備蓄は、ない家庭と量も考え方も変わります。避難所の備蓄食と炊き出しが使えない前提で組む必要があるからです。
この記事は、医師や管理栄養士の助言に代わるものではありません。何をどれだけ用意するかという量の話と、いつ・どこに確認しておくかという手順の話だけを書きます。
前提:避難所の食事は「食べられるとは限らない」
理由は3つあります。
1. 自治体の備蓄食がアレルゲン対応とは限らない
アルファ化米やパンの缶詰には、特定原材料等を使わずに作られた製品があります。ただし、お住まいの自治体がそれを備蓄しているかは自治体ごとに違います。これは全国共通の答えがない項目なので、後述する「確かめること」で市区町村に直接聞いてください。
2. 炊き出しは原材料が分からない
ボランティアや支援団体による炊き出しは、その場で作られるため、原材料が分からないことがあります。農林水産省のガイドも、炊き出しや支援物資にアレルゲンが入っていないかを確かめるよう示しています。
3. 支援物資は選べない
配られるものは、その時点で届いたものです。表示を確認できたとしても、代わりがあるとは限りません。
つまり、**アレルギーのある家庭にとって備蓄は「足りない分を補うもの」ではなく「それだけで食べつなぐもの」**になります。
何日分を用意するか
一般的な目安は最低3日・できれば1週間です(防災備蓄は何日分必要?)。ただ、アレルギー対応食品は災害時に手に入りにくいため、農林水産省の「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」は、アレルギー対応食品と飲料水を少なくとも2週間分備えることをすすめています。この日数を丸ごと自給する前提で数えてください。
3日分では足りないことがあるのは、水道とガス
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出典:内閣府「ライフライン・インフラの復旧状況」(2011年)、中央防災会議「都心南部直下地震の被害想定」(令和7年12月)をもとに編集部作成
「3日分は自分で、残りは支援で」という組み方が使えません。支援物資が届いても食べられない可能性があるためです。
離島や半島、山間部など物流が止まりやすい地域では、さらに日数を足すことを検討してください。お住まいの地域で支援が届くまでにどれくらいかかるかは、市区町村の地域防災計画に想定が書かれていることがあります。
用意するもの
食べ慣れたものを、多めに持つ
いちばん確実なのは、ふだん食べているアレルギー対応食品を多めに買い置きし、古いものから食べて、食べた分だけ買い足すやり方です(少なくとも2週間分。農林水産省)。ローリングストックと呼ばれる方法で、アレルギーのある家庭とは特に相性がいい。
理由は2つあります。
- 原材料をすでに確認済みで、本人が食べられると分かっている
- 災害時は食欲が落ちるので、慣れない味のものは余計に食べられない
非常食を別に買いそろえるより、この方法のほうが続きます。非常食の選び方でも同じ考え方を書いています。
アレルゲン不使用の非常食を「補助」として
ローリングストックに加えて、調理不要で長期保存できるものを何食分か持っておくと、停電・断水が重なったときに楽になります。
選ぶときに見るのは、パッケージの**「特定原材料等不使用」**の表示が何品目を対象にしているかと、原材料表示そのものです。「〇〇不使用」の表記だけを信じず、原材料欄を毎回読んでください。製造ラインの共用による混入(コンタミネーション)についても、注意喚起表示があるかを確認します。
表示義務がある特定原材料は、えび・カシューナッツ・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生の9品目です(2026年4月1日にカシューナッツが加わり、2年間の経過措置があります)。表示が推奨される20品目と合わせて29品目です。古い製品には、以前の品目数で書かれた表示が残っていることがあります。
出典:消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月)
調理の手段を用意する
アルファ化米には水かお湯が要り、レトルトは温めたほうが食べやすいので、調理の手段もあると、選べる食品が増えます。
そのため、カセットコンロとボンベは「あると便利」ではなく、そろえておきたい品目になります。本数の目安はカセットボンベの必要本数で計算できます。農林水産省の「1人1週間約6本」から計算すると、4人家族の3日分で11本です。
水も、飲む分とは別に調理用が要ります。備蓄水の計算で人数と日数を入れてください。
器具を分ける
調理器具や食器を共用すると、そこから混入します。アレルギーのある人の分を専用にして、色やテープで区別しておくと、非常時に間違えません。
使い捨ての食器・ラップも、洗えない状況では役に立ちます(農林水産省のガイドの「あると便利な備品」)。皿にラップをかけて使えば、洗わずに済みます。
物より先に、伝える準備をする
備蓄と同じくらい大事なのがこちらです。誤食は、本人以外が善意で食べ物を渡したときに起きます。
支援カードを作る
避難所に行く場合も、在宅で支援を受ける場合も、口頭で毎回説明するのは現実的ではありません。 次の内容を書いたカードを持たせてください。
- 名前と年齢
- 除去が必要な食品(具体名で)
- 症状が出たときの様子
- 処方されている薬と、その保管場所
- かかりつけ医と緊急連絡先
お子さんの場合は、本人が持つぶんと、保護者以外の家族が持つぶんの2枚あると安心です。
処方薬の確認
アドレナリン自己注射薬を処方されている場合、保管の温度条件と有効期限を確認しておいてください。条件は添付文書に書かれています。災害時に取り出せる場所にあるか、避難時に持ち出せるかも見ておきます。
薬の名前と用量はお薬手帳に記録し、手帳そのものを持ち出せるようにしてください。スマートフォンで撮影して保存しておくと、手帳を持ち出せなかったときに役立ちます。
お住まいの自治体で確かめること
ここから先は、全国共通の答えがない部分です。市区町村ごとに運用が違うので、平時に確認してください。
- 備蓄食にアレルゲン対応のものがあるか。 ある場合、何食分か。避難所ごとに置いてあるのか、拠点にまとめてあるのか
- アレルギーがあることを事前に伝えておける仕組みがあるか
- 炊き出しの原材料を確認できる窓口があるか
- 指定避難所と福祉避難所の場所
聞く先は、市区町村の防災担当課です。保健所や保健センターが窓口になっている自治体もあります。
答えが「対応の備蓄はありません」だったとしても、それは無駄足ではありません。自給しなければならない日数がはっきりするからです。
まとめ
- 避難所の備蓄食と炊き出しは使えない前提で組む
- 日数を丸ごと自給する。支援で埋める前提にしない
- ふだん食べているものを多めに持つのがいちばん確実
- 調理手段(カセットコンロ・ボンベ)と調理用の水をそろえる
- 器具を専用にして、使い捨ての食器を用意する
- 支援カードで、本人以外に伝わる形にしておく
- 自治体の備蓄にアレルゲン対応があるかを、平時に電話で確認する
必要な数量は防災備蓄診断でも計算できます。ただし診断はアレルギーの有無を聞いていないので、出てきた食料の数量を「全量を自分で用意する」と読み替えてください。
関連する品目の選び方
参考資料
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
- 消費者庁「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月)
- 農林水産省「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」p.21
- 内閣府「ライフライン・インフラの復旧状況」(2011年)
- 中央防災会議「都心南部直下地震の被害想定」(令和7年12月)