防災備蓄診断

公開 2026-09-22

防災備蓄、みんなはどれくらい備えている? 公的調査を横断して比べた品目別の割合

携帯トイレの備蓄率は27.2%(内閣府・全国)。同じ品目でも調査によって27%と55%に割れる理由、年代で向きが逆になる品目、5年で倍増した品目まで、国・県・市の調査を横断して整理しました。

「みんなはどれくらい備えているのか」を、公的調査で確かめました

防災用品を買うかどうか迷うとき、「他の家はどうしているのか」が気になります。ところが検索すると、同じ品目なのに 27% と出たり 55% と出たりします。どちらも嘘ではありません。調査のやり方が違うだけです。

そこで、国・都道府県・市区町村の公的調査を横断して、品目ごとの備蓄率を並べ直しました。同時に、数字が割れる理由と、まだ誰も調べていないこともまとめています。

なお、この記事は「備えている人が少ないから買うべき」と言うためのものではありません。数字を置くだけにして、判断は読む方にお任せします。

全国の数字(内閣府、7分類)

いちばん信頼できるのは、内閣府が全国から層化2段無作為抽出で選んだ人に郵送で聞いた調査です。

分類3日分以上備蓄している
飲料水(1人1日3リットル以上)69.8%
食料品(レトルトご飯、乾パン、缶詰など)59.8%
衛生用品(ティッシュ、除菌シート、体拭きシートなど)38.4%
食品加熱用熱源(ガスボンベ、固形燃料など)27.7%
携帯トイレ・簡易トイレ27.2%
嗜好品(羊羹、チョコレート、飴など)19.6%
暑さ・寒さ対策の消耗品(瞬間冷却材、使い捨てカイロなど)18.6%

出典:内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」令和7年8月21日〜9月28日実施、有効回答1,707人。集計表のCSVから数値を引いて作表しました。

上から順に並んでいますが、これは回答の多い順であって、備えるべき順ではありません。

年代で「向きが逆になる」品目があります

「若い人は備えていない」とよく言われます。実際に調べると、そう単純ではありませんでした。

年代携帯トイレ熱源衛生用品
18〜29歳16.2%16.9%39.2%
30〜39歳27.3%20.1%47.9%
40〜49歳25.0%20.7%41.4%
50〜59歳34.8%31.7%42.9%
60〜69歳28.4%35.8%35.8%
70歳以上26.2%30.3%31.8%

カセットコンロなどの熱源は、60〜69歳までは年代が上がるほど高くなります(18〜29歳16.9% → 60〜69歳35.8%。70歳以上は30.3%)。ところが衛生用品は逆で、30代がいちばん高い(47.9%)。飲料水にいたっては、どの年代も63.9〜73.0%でほとんど差がありません。

品目ごとに、抜けている人が違います。

ラジオはさらに極端です。仙台市の調査では、**20代の20.3%に対して70代は81.0%**でした。

出典:仙台市「防災に関する市民意識アンケート調査(令和6年12月)」令和6年9月18日〜10月11日実施、有効回答1,735人。設問は「非常時にすぐ使用できるように用意しているもの」で、内閣府の「3日分以上」とは聞き方が違います。

住んでいる場所でも、大きく違います

携帯トイレの備蓄率を、都市の規模で分けたものです。

都市規模携帯トイレ
東京都区部47.9%
政令指定都市35.1%
中都市25.6%
小都市19.1%
町村17.6%

東京都区部と町村で2.7倍の開きがあります。(出典は前掲の内閣府調査)

差が生じる理由は、この調査からは分かりません。

同じ品目なのに数字が割れる理由

携帯トイレの備蓄率を、調査ごとに並べてみます。

調査割合回答者の集め方
千葉市(令和7年)55.3%市ホームページで回答を募るWEBアンケート
仙台市(令和6年)30.1%住民基本台帳から無作為抽出
内閣府(令和7年)27.2%全国から層化2段無作為抽出
新潟県(令和6年)34.6%(何らかの量を備蓄。3日分以上は10.3%)県内18〜79歳から500人に郵送

いちばん効いているのは、回答者の集め方です。

市のホームページで誰でも回答できるWEBアンケートは、自分から回答した人の集計なので、もともと防災への関心が高い層に寄ります。一方、住民基本台帳から無作為に選んで郵送する方法は、関心のない人にも届きます。同じ質問でも、誰に聞いたかで数字は変わります。

このほか、調査年(仙台市と千葉市では、調査を重ねるごとに携帯トイレの割合が増えています)、地域、設問文(「3日分以上」か「用意しているか」か)も効きます。

**ですから、この記事でも複数の調査の数字を足したり平均したりはしていません。**全国の割合として読めるのは、全国から無作為抽出した国の調査(内閣府・厚生労働省)です。

携帯トイレは、5年で倍になりました

同じ自治体が同じ設問で続けている調査があると、変化が見えます。

品目仙台市 令和元年仙台市 令和6年
携帯トイレ・簡易トイレ14.3%30.1%
スマートフォンの充電用電池37.4%48.2%
食料・飲料水69.9%74.8%
携帯ラジオ65.3%58.2%
カセットコンロ67.5%64.6%

携帯トイレは5年で2倍、充電用電池も10.8ポイント増えました。逆に携帯ラジオは7.1ポイント減っています。

千葉市でも、2024年2月の36.3%から2025年9月の55.3%まで、約1年半で3回続けて増えています(36.3% → 49.3% → 55.3%。2024年度までは選択肢名が「災害用トイレ」。市ホームページで回答を募る調査のため水準は高めです)。

まだ誰も調べていないこと

調べていて、はっきりした空白がありました。

「実際に被災した人が、自宅に備えていた品目のうち、何が役に立って何が足りなかったか」を品目別に聞いた調査が、ほとんど存在しません。

  • 内閣府は避難所に滞在した人(544人)に「滞在中に役に立ったもの」を27項目で聞いていますが、避難所での生活についての質問で、自宅の備蓄についてではありません
  • 仙台市が東日本大震災のあと(平成23年11〜12月)に、備えていた17項目それぞれについて役に立ったかを聞いた調査(有効回答7,565人)が唯一に近い例ですが、2011年の品目リストなので携帯トイレもモバイルバッテリーも入っていません
  • 能登半島地震のあとの新潟市の市民アンケートは、地震前に備蓄していた品目を14の選択肢で聞いていますが、それが役に立ったかは聞いていません

とくに在宅避難をした人の備蓄品目データは、国にも自治体にも見当たりませんでした。 内閣府の令和元年の報告書(平成30年12月調査)は在宅避難者456人から回答を得ていますが、その人たちには品目を聞いていません。

「何を備えているか」は十分に調べられているのに、「それが実際に役に立ったか」は、ほとんど分かっていないのが現状です。

この記事で参照した調査

調査実施主体回答数品目数
防災に関する世論調査(令和7年8月)内閣府1,7077分類
防災に関する市民意識アンケート調査(令和6年12月/令和元年)仙台市1,735/1,96910
東日本大震災に関する市民アンケート調査(平成24年3月)仙台市7,56517
WEBアンケート 災害への備え(令和7年9月)千葉市1,65530(「その他」「準備しているものはない」を含む)
令和6年度 第1回県民アンケート新潟県4373
令和6年能登半島地震 災害初期対応検証報告書 市民アンケート新潟市2,03714
国民健康・栄養調査(令和元年)厚生労働省2,525食品3区分
避難所の役割についての調査検討報告書(令和元年)内閣府1,00027

いずれも公表されている集計表・報告書から数値を引き、このページで作表しています。数値の解釈はすべて当サイトによるものです。

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