防災備蓄診断

公開 2026-09-20

1000Whのポータブル電源でできること:停電時の使い方と、仕様の見方

1,000Whで実際に何が何時間動くのかを計算し、このクラスの製品の公開仕様が、容量・重さ・サイクル数・保証などでどのくらいの幅に収まるかを整理しました。特定の製品はすすめていません。

1,000Whは「停電のとき、何を諦めないか」で足りるかが決まります

ポータブル電源を調べると、1,000Wh前後のモデルが各社の中心にあります。価格帯も選択肢も多く、防災用に買うならまずここを見ることになります。

ただ「1,000Whあれば安心」とは言えません。1,000Whは、電気ケトルなら1時間ぶん、スマートフォンなら数十回ぶんです。何に使うかを決めていないと、同じ容量でも「3日もった」にも「半日で空になった」にもなります。

この記事では、1,000Whで実際にどれだけ動くのかを計算してから、このクラスの製品の仕様がどのくらいの幅に収まっているかを、同じ項目で整理します。数字はすべてメーカーの公開仕様です。特定の製品はすすめていません。

必要な容量は「消費電力 × 使う時間」で決まります

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機器ごとに必要なワットアワーの目安9WのLED電球を5時間で45Wh。冷蔵庫は401〜450Lで1日約800Wh、201〜250Lで1日約836Wh。LED電球 9W 5時間45Wh冷蔵庫 401〜450L 1日800Wh冷蔵庫 201〜250L 1日836Wh冷蔵庫を1日動かすだけで約800Wh。1,000Whクラスでも1日でほとんど使い切ります。
冷蔵庫は、カタログの4つの容量の区分のどれでも、1日におよそ760〜930Whを使います(2024年の平均)。スマホ・扇風機・医療機器などは、機器の表示(定格ラベル)の消費電力に使う時間を掛けて出してください。表示の容量はそのまま使えず、ある製品の公開仕様から逆算すると、取り出せるのは8割強です。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ2025年版」p.69(冷蔵庫の定格内容積別の年間消費電力量の平均、2024年)、p.129(9Wの電球形LEDランプの例)をもとに編集部作成

1,000Whで動く量を計算する

取り出せるのは容量の8割くらい

カタログの容量は電池に入っている電力量です。コンセント(AC)から取り出すときは変換のロスがあるため、表示どおりには使えません。

目安はメーカーの稼働例から逆算できます。たとえば、ある1,024Whの製品の公開仕様には「電気ケトル850Wを1時間」という例が載っています。850Whぶんなので、実際に取り出せるのは容量の8割強と見ておくと計算が合います。

1,000Whのモデルなら、使えるのはおよそ800Wh。これを基準に考えます。

800Whで何がどれだけ動くか

公的な資料で消費電力が確かめられるものと、800Whで動かせる時間です。

使うもの消費電力800Whで動く時間
LED電球(9Wの例)9W約88時間
ノートパソコン約15W(資源エネルギー庁の試算から逆算)約53時間
家庭用の冷蔵庫1日約800Wh(401〜450Lの平均)約1日

スマートフォン・扇風機・電気毛布・電子レンジ・ドライヤーなどは、製品によって消費電力が大きく違い、公的な資料に目安がありません。本体やACアダプターの表示の消費電力で、「800Wh ÷ 消費電力(W)=動く時間」を計算してください。電子レンジやドライヤーのように消費電力の大きい機器は、定格出力も足りるかを確かめます。

冷蔵庫は少し説明が要ります。冷蔵庫は常に全力で動いているわけではなく、庫内が冷えれば止まります。1日あたりの消費電力量は、カタログに載っている年間消費電力量を365で割れば出ます。省エネ性能カタログ2025年版によると、2024年の製品の平均は、定格内容積401〜450Lで年間292kWh、201〜250Lで年間305kWhで、1日にするとおよそ0.8kWhです。つまり**1,000Whのポータブル電源では、冷蔵庫を1日動かすだけでほぼ空になります。**お使いの冷蔵庫の実際の値は、本体の内側や背面のラベルで確認できます。

ここが判断の分かれ目です。冷蔵庫を止めない前提なら1,000Whでは足りません。冷蔵庫は諦めて、照明・通信・情報に絞るなら、下の例のように1,000Whで3日をまかなえる計算になります。

3日ぶんの見積もり例

大人2人で、照明・スマホ・情報に絞った場合です。LED電球は9Wの例、スマホとラジオは仮の値です。お使いの機器の表示の値に置き換えて計算してください。

  • LED電球(9W)2つを1日5時間:9W × 2つ × 5時間 × 3日 = 270Wh
  • スマートフォン2台を1日1回ずつ充電(仮に1回20Whとして):20Wh × 2台 × 3日 = 120Wh
  • ラジオ・情報機器(仮に1日20Whとして):20Wh × 3日 = 60Wh

合計450Wh。1,000Whクラス(使えるのは約800Wh)に収まります。ここに、仮に50Wの電気毛布を1日3時間足すと450Wh増えて900Whになり、3日は持ちません。

「足りるかどうか」は容量ではなく、何を動かすと決めたかで決まります。 先に決めるのは容量ではなく使い道です。

定格出力が意味すること

容量(Wh)と並んで見るのが定格出力(W)です。これは「同時に何Wまで流せるか」で、容量とは別の制約です。

下の表の5製品では、定格出力は1,500〜1,800Wでした。消費電力がこの範囲に収まる家電なら動きます。ただし前の章のとおり、動いても長くは使えません。

各社とも定格を超える機器を一時的に動かす機能を持っています(呼び方はメーカーごとに違います)。ただしエアコンやコンプレッサーを使う機器など、対象外の機器がメーカーごとに決められています。特定の家電を動かす目的で買うなら、その機種の注意書きを先に読んでください。

仕様表を見るときの4つの注意点

メーカーの数字は、条件を揃えないと比べられません。

1. サイクル数は「何%まで減った時点か」とセットで見る

「6,000回」「4,000回以上」といった充放電サイクル数は、その回数を終えた時点で容量が何%残っているかの条件が付いています。70%まで減った時点を基準にしているメーカーと、80%を基準にしているメーカーでは、同じ回数でも意味が違います。表では条件も併記しました。

2. 充電時間は「モード」で変わる

急速充電のモードを持つ製品があり、カタログの最短時間はその値のことがあります。通常モードでの時間も仕様表で確かめます。また急速充電は電池の負担が大きいため、「急がないときは通常モードのほうが電池が長持ちする」と明記しているメーカーもあります。

3. UPSの切替時間は、用途に足りるかで見る

停電したときにバッテリー給電へ切り替わるまでの時間です。下の表の5製品では10ミリ秒未満〜20ミリ秒でした(記載のない製品もあります)。切り替えが0秒ではないことを理由に、データサーバーなど無停電電源装置が必要な機器にはつながないよう注意書きを付けているメーカーもあります。在宅医療機器のように瞬断が許されない機器につなぐ用途では、ポータブル電源のUPS機能をあてにせず、機器の取扱説明書に従ってください。

4. 保管方法の指示がメーカーで違う

これは見落としやすい点です。防災用は「買って置いておく」使い方なので、保管の指示が実際の手間を決めます。

  • あるメーカー:3〜6か月ごとに、容量の60%程度まで充電して保管
  • 別のメーカー:3か月に一度を目安に、100%まで充電した状態で保管

満充電で置くか、6割で置くかが逆です。**買ったメーカーの指示に従ってください。**どちらにしても、数か月に一度は残量を確認する作業が発生します。これを続けられるかは、買う前に考えておく価値があります。

1,000Whクラスの仕様の幅

日本の公式サイトで仕様を公表している、1,000Whクラスの5製品(4社)の数字を、項目ごとに「いちばん小さい値〜いちばん大きい値」で整理しました。確認日は2026年9月20日です。製品名は載せていません。特定の製品をすすめないためです。

電池はこのクラスでは5製品ともリン酸鉄リチウムイオンでした。

項目5製品の幅見るときの注意
容量1,024〜1,070Wh実用上の差はほとんどありません
定格出力1,500〜1,800W一時的な上限は別に書かれています
重量約10.6〜12.9kg2kg以上の開きがあります
サイズ(W×D×H)幅314〜398mm、奥行201〜224mm、高さ234〜284mm置き場所は3辺で確認します
サイクル数4,000回〜約6,000回何%まで減った時点かの条件が製品で違います。記載のない製品もあります
ACでの満充電45分(80%まで)〜1.7時間急速充電のモードの値かどうかを見ます
停電時の切替10ミリ秒未満〜20ミリ秒記載のない製品もあります
保証延長分を含めて5年基本の年数と、延長の条件(会員登録など)が製品で違います

表から読み取れることを整理します。

  • 容量はほぼ横並び。 容量で選ぶ段階ではないということです
  • 重さの差がいちばんはっきりしている。 持ち出す・階段で運ぶ想定があるなら、ここを見ます
  • サイズは奥行と高さが製品で違う。 収納場所が決まっているなら、幅だけでなく3辺で確認してください
  • サイクル数と保証は、数字だけでは比べられない。 条件(何%まで、会員登録の有無)をあわせて読みます

どれが合うかは、持ち運ぶか置きっぱなしか、収納場所の寸法はいくつか、保管の手間をどれだけかけられるか、で変わります。

仕様を確認する

メーカーの公式サイトでは、ここに載せていない出力ポートの構成や同梱物、最新のモデルチェンジも確認できます。

買う前の順番

  1. 停電のとき何を動かすかを決める(冷蔵庫を含めるかどうかで容量クラスが変わります)
  2. 必要な容量を計算する。1,000Whで足りないなら2,000Wh以上のクラスへ。逆に照明と通信だけでよいなら500Whクラスで足ります
  3. 置き場所の3辺を測る。候補の製品のサイズと照らす
  4. 運ぶ経路を歩いてみる。階段があるなら重量の差が効きます
  5. メーカー公式で、保管方法と保証の条件を読む

電源は1台で全部を賄う必要はありません。照明とラジオは乾電池、スマホはモバイルバッテリー、足りない分をポータブル電源で、と役割を分けたほうが無理がありません。この分け方は停電への備えで整理しています。

全部をポータブル電源で賄う必要はありません

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電源を役割で分ける乾電池で照明とラジオ、モバイルバッテリーでスマホ、残りをポータブル電源で賄う。乾電池照明・ラジオ安い・長期保管できるモバイルバッテリースマホ1人1本。約74Whポータブル電源扇風機・冷蔵庫・医療機器上の2つで足りない分だけ左ほど安く、長く保管できます。右へ行くほど1台の単価が上がります。ポータブル電源は高額なので、懐中電灯・ラジオ・モバイルバッテリーをそろえてからで大丈夫です。
照明とラジオは乾電池、スマホはモバイルバッテリーで済みます。ポータブル電源は、その2つで賄えない機器のためだけに容量を決めると、無駄に大きな1台を買わずに済みます。

出典:防災備蓄診断 編集部作成

参考資料

  • ポータブル電源のメーカー4社の日本の公式サイトの製品仕様(2026年9月20日確認)
  • 経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ2025年版」p.69(冷蔵庫の定格内容積別の年間消費電力量)(https://seihinjyoho.go.jp/)
  • 内閣府 防災情報のページ「災害の備え」(https://www.bousai.go.jp/)

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