公開 2026-10-11
停電時の冷蔵庫・冷凍庫:中身を守る順番と保冷剤・クーラーボックスの使い方
扉を開けなければ冷蔵庫は約4時間、冷凍庫は約1〜2日もつとされています(農林水産省)。中身を守る順番、保冷剤を普段から仕込んでおく置き方、クーラーボックスへの移し方、食べる・処分の見分け方までまとめました。
停電で最初に気になるのが、冷蔵庫の中身ですね
停電が起きると、照明や通信の次に気になるのが冷蔵庫と冷凍庫の中身です。作り置きのおかず、買ったばかりの肉や魚、子どものアイス。どれも「いつまでもつのか」が分からないまま、つい扉を開けて確かめたくなります。
ここでは、停電したあとに中身を守る順番と、保冷剤・クーラーボックスの使い方をまとめます。停電対策の全体像は停電への備えにありますので、この記事は冷蔵庫・冷凍庫に絞ります。
まず、扉を開けないことから始める
扉を開けなければ、冷蔵庫で約4時間、冷凍庫で約1〜2日は低い温度を保てるとされています(農林水産省)。気温や中の食品の量によって変わる目安ですが、「開けなければ思ったよりもつ」というのが出発点です。
逆にいえば、**扉を開けるたびにこの時間は短くなります。**停電した直後にやることは、物を動かすことではなく、頭の中で庫内を思い出すことです。何がどの段にあるか、今日中に食べたいものはどれか。思い出してから一度で取り出すほうが、確かめながら何度も開けるよりもちます。
冷凍庫がある程度詰まっていると、食品そのものが保冷の塊として働きます。すき間が多いときは、空いたところに保冷剤や凍らせたペットボトルを入れておくと、普段の消費電力にも停電のときにも効いてきます。
中身を守る順番
全部を守ろうとすると、どれも中途半端になります。傷みやすいものから順に手をつけるのが基本です。
| 順番 | 手をつけるもの | 考え方 |
|---|---|---|
| 1 | 冷凍庫 | 開けない。保冷の塊として最後まで使う |
| 2 | 冷蔵庫の傷みやすいもの | 肉・魚・加熱済みのおかず・乳製品から先に食べる |
| 3 | 常温でしのげるもの | 根菜、未開封の調味料や飲料は外に出して、庫内を空けすぎない |
| 4 | 溶けはじめた冷凍品 | 中心まで溶けたものから加熱して食べきる |
冷蔵庫の中でも、扉のポケットは温度が上がりやすい場所です。開け閉めの影響を受けやすいので、ここに入っているものから様子を見ます。
一度完全に溶けた冷凍食品を、もう一度凍らせるのは避けます(農林水産省)。見た目が戻っても、溶けている間に増えた菌はそのままです。溶けたものは加熱して食べるか、処分するかのどちらかにします。
保冷剤は「停電してから探すもの」にしない
保冷剤は、停電してから買いに行けるものではありません。普段から冷凍庫のすき間に入れておき、停電したら使うという順番にしておくと慌てません。
- 置き場所:冷気は下に降りるので、クーラーボックスに移すときは保冷剤を食品の上に置きます。冷凍庫の中では、どこでもかまいません
- 大きさ:小さいものを何個も入れるより、大きいものを数個入れたほうが長もちします。すき間を埋める用に小さいものを足す形が扱いやすいです
- 凍らせた水:2Lのペットボトルに水を8分目まで入れて凍らせたものも使えます。溶けたあとは生活用水になりますし、口をつけずに使えば飲み水にもなります
| タイプ | 向いている状況 | 見ておく点 |
|---|---|---|
| 柔らかいタイプ | 食品のすき間に入れたい、形に沿わせたい | 凍るまでに時間がかかる |
| 硬いタイプ | 冷凍品をまとめて冷やしたい | かさばるので冷凍庫の容量を使う |
| 凍らせたペットボトル | 買い足しをしたくない、水も兼ねたい | 溶けると結露するので袋に入れる |
ドライアイスを使うときは、素手で触らないことと、換気できる場所で扱うことに気をつけてください。密閉した容器や締め切った車内には置かないようにします。
クーラーボックスへ移すときの手順
停電が長引きそうだと分かってきたら、冷蔵庫の中身をクーラーボックスに移すことを考えます。ここでも「開ける回数を増やさない」が基本で、移すなら一度にまとめます。
- 先にクーラーボックスを涼しい場所に置き、ふたを開けて準備しておく
- 冷蔵庫から、今日と明日に食べるものだけを一度で取り出す
- 下に食品、上に保冷剤の順で入れる
- すき間にタオルや新聞紙を詰めて、空気の層を減らす
- 直射日光と暖かい空気を避けて、床に近い涼しい場所に置く
クーラーボックスは温度を保つ道具ではなく、温度の上がり方をゆるやかにする道具です。発泡スチロールの箱でも、すき間を詰めて日陰に置けば数時間はしのげます。長い停電に備えるなら、断熱材の厚いタイプのほうが余裕がありますが、置き場所に困るほど大きいものを選ぶと、普段しまい込んで使えなくなります。
ポータブル電源で冷蔵庫を動かす方法もありますが、容量の考え方が変わります。1日あたりの消費電力量の出し方は1000Whのポータブル電源でできることにまとめています。
食べるか処分するか、迷ったとき
判断の目安は温度と時間です。冷蔵が必要なものが長く常温に置かれていたら、処分に回します。傷みやすい肉・魚・加熱済みのおかずは、先の目安の時間を過ぎたら思い切って処分するのが落ち着きます(農林水産省)。
においや見た目では分からないこともあります。迷ったら食べない。停電のあとに体調を崩すと、片づけも買い出しも止まってしまいます。手を洗う水が十分にないときは、使い捨ての手袋やウェットティッシュで代えるという準備もしておきましょう。
冷蔵庫に頼らずに食べられるものが1〜2食分あると、この判断がぐっと楽になります。レトルトのごはんや缶詰、乾麺を普段の買い物で少し多めに持つ形が続けやすいです。
電気が戻ったあとに見ること
復旧したら、庫内の温度が戻るまでに時間がかかります。扉を閉めたまましばらく待ち、それから中を確かめます。製氷機の氷や、溶けた水がたまっているところは、一度片づけておくと安心です。
地震による停電では、復旧のときの通電火災に注意が必要です。避難するときや家を離れるときは、ブレーカーを落としてから出るようにします(内閣府)。
停電が何時から何時まで続いたかを、スマホのメモに残しておくと、食べるか処分するかの判断材料になります。
店舗・事務所の冷蔵・冷凍ケースは
飲食店や小売の店舗では、家庭と違って「捨てたこと」を説明できるようにしておく必要があります。停電の開始と復旧の時刻、庫内の温度、処分したものの品名と数量をその場で記録しておくと、後の仕入れや保健所への説明がしやすくなります。営業を続けるかどうかの線引き(庫内温度が何度を超えたら販売をやめるか)を、停電する前に決めておくのが現実的です。
まとめ:次にやること
- 保冷剤を冷凍庫のすき間に入れておく。入れるものがなければ、水を入れたペットボトルを凍らせておく
- クーラーボックスか発泡スチロールの箱の置き場所を決めておく
- 冷蔵庫に頼らずに食べられるものを1〜2食分、普段の買い物で持っておく
停電を想定した備えが足りているかは、停電に備える防災診断で確かめられます。
参考資料
- 農林水産省「停電や断水、大雨による浸水に遭われた地域の皆様へ~食中毒に注意しましょう~」
- 農林水産省 家庭備蓄ポータル「災害に備えた食品の家庭備蓄」
- 内閣府「家庭における地震時等の停電対策について」